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Geo Story _ Akira Fukutome  

Geo Story  

江戸料理人 福留 章 さんに聞く
「 地球の恵みを頂く江戸の食文化 」


" Edo Food Culture " in Harmony with the Earth
Akira Fukutome, Edo Chef

江戸300藩は
食のサーキュラーエコノミー  

四里四方(直径16キロメートル)のフードシステムがが江戸時代に存在していた300藩の中にそれぞれ存在していました。

江戸料理とは、江戸(東京)の料理のことではなく、江戸時代に発展し、定着した地域性、季節性、循環性の高い近距離型のガストロノミーのことをいいます。

 

自然への畏敬の念と
共に恵みを頂く  

江戸の文化を支えたのは、食のシステムが安定し、地域ごとに個性的な食文化が華開き、人々の生活に潤いと豊かさが生まれたためです。確かに地震や津波、火山噴火、飢饉などが発生しましたが、変動する大自然に畏敬の念を抱きつつも、大地や山川海と共存し、その恵みを有り難く頂く事で、自然と共生する食文化が定着してきました。

もちろん電気がなかった時代ですので、旬を活かし、切る煮る炊くなどの調理技術、発酵や乾燥などの保存の知恵を活かしたりと、その地域ごとに自然の恵みを美味しく頂く知恵に溢れていました。現代の日本中の郷土料理の原点はこの時代に生まれました。

 
 
 
 

鱧の刺身  

材料
鱧、針生姜、天日塩、天然水(浄水可)、寒天、酒、梅肉

鱧を卸し 頭、骨、中骨、浮き袋、肝、卵(白子)は熱湯かけて ぬめり、汚れをとっておく。 頭、骨は焼いて天然水と酒を合わしたもので強火で出汁をとっておく。(アク取りはしっかり) 浮き袋は幅1ミリ、肝は三分割位、卵は5ミリ幅位にきり 先にとっておいた鱧出汁で塩味をつけながら炊く。 この時、鱧と一緒に食べる事を前提に濃い目にしておく。寒天で固める。 身は皮目のぬめりをしっかり取り塩と酒を振り水を抜いておき、水が抜けたら 皮目から骨切りをし皮目をあぶり、煮凝り、梅肉と一緒に盛り仕上げる。 江戸時代は刺身の時は皮目から骨切りをし、天婦羅やお椀種に使う時は身の方から骨切りをする。 と使い分けていたようです。 実際、生で食べる時は皮から骨切りした方が骨が気にならないです。

 

こおり豆腐  

材料
絹豆腐一丁、天然水500ミリ、天日塩少々、アガー20g、浄水

豆腐を9分割して浄水でゆっくり温め、温まったら お湯からあげで冷ましながら水気を飛ばしておく この間に天然水に天日塩を入れ(天然水の甘味が引き立つ程度、塩気を感じない位) アガーを溶かし入れよく沸かす。 型に豆腐を均等に並べ、沸かした天然水を流し入れ冷やし固め、豆腐の周りに水が均等になるように切り出し器に盛る。 今回は東京の檜原村の天然水と檜原村の豆腐を使ったが、これは豆腐も作る過程で水がかなり重要な要素なので産地を揃え、味わいに統一感を出す。

 

鰻豆腐  

材料
木綿豆腐一丁、大和芋25g(すりおろし)、小麦粉15g、板海苔(三分割しておく) 、醤油、酒、砂糖、みりん、粉山椒

木綿豆腐に重しをかけしっかり水を抜き裏ごしかけ、大和芋、小麦粉をよく混ぜ合わせる。 切っておいた板海苔にこの豆腐の種を厚さ5ミリ位に 塗り、竹串等で筋を付け 鰻の身に似せておく。 これに小麦粉を薄く振り 太白胡麻油やサラダ油等(香りの弱い油)でフライパンで 両面しっかり焼く、(豆腐側に焼き目がしっかり付く位) 焼き目が付いたら、酒、醤油、みりん、砂糖で照りが出るまで煮詰めながら火にかけ、照りがでたら 器に盛り、粉山椒を振り仕上げる。

 

鰯かびたん漬け  

材料
真鰯 しし唐、おくら、南蛮酢

※南蛮酢
米酢90ミリ、 酒50ミリ、出汁300ミリ~500ミリ、砂糖30g、塩10g


真鰯を三枚に卸し 素揚げし更に素焼きし冷ましながら水気を飛ばしておく。 しし唐 おくらも焼いて冷ましておく。 どちらも冷めたら南蛮酢に漬けて味を含ませる。

 

鯖船場煮  

材料
真鯖、大根、人参、牛蒡、酒、天然水、天日塩、黒胡椒

鰯を卸し、頭、中骨は熱湯をかけて汚れを取り焼いてから天然水と酒で出汁を取る。(アク取りしっかりしておく) 身は塩をしっかり振り日陰で干しておく。 1日干したら、皮目に焼き目をつけ、取った出汁に短冊に切った野菜と共に入れ 弱火でゆっくり炊いていく この時野菜の固さや鯖の仕上がりの固さは好みなので それぞれ入れるタイミングは、作る人のタイミングで良い。 具材に火が入ったら お椀に盛り黒胡椒を振り仕上げる。 野菜の切り方は、銀杏切りでも、乱切りでも好みで良い。具材も好みのもので良いが、根菜の方が出汁が出て味に奥行きがでます。

 

春の雪  

材料
山独活、青菜(しんとり菜、小松菜等)、合わせ酢(出汁4 米酢2 淡口醤油2 みりん少々)

山独活の皮を厚くむいて、拍子切り又は千六本位に切り水でさっと洗う。 青菜の葉の緑の濃い所を茹でてすりつぶし合わせ酢と合わせ 器の下に敷いて独活をこんもりと盛りつける。 青菜はなるべく山独活の香りを邪魔しないように香りの弱いものを選ぶと山独活の香りが活きてきます。 この料理は 名前といい日本の四季の春をシンプルに表現した一品だと思います。  

 

鰹膾造り  

材料
鰹、生姜、茗荷、合わせ酢(出汁4 米酢2 淡口醤油2.5 みりん少々)

鰹を平造りにし塩を軽く当てておく。 この間に茗荷を縦に薄く切っておき生姜は卸しと針生姜を使っておく 合わせ酢に鰹、針生姜、茗荷、卸し生姜を入れさっと 混ぜ合わせ山に盛り仕上げる。

 

ふのやき  

材料
小麦粉、味噌、くるみ(木の実)、長葱(白髪葱)

小麦粉を水で溶き薄く丸く焼く 焼いた生地に味噌を塗りくるみと白髪葱をのせ一緒に巻き込む。 もともと、砂糖が貴重な時代に、茶の湯の席でお菓子代わりに使われていた一品です。 写真の一品は八寸の一品として、味噌、合鴨、白髪葱を巻き込み酒肴として仕上げたモノです。
1590年に千利休が豊臣秀吉を正客として迎え、もてなした茶会での懐石料理の菓子として出された記録ありです。江戸時代1670年代に麹町助惣の助惣焼きが江戸の名物菓子として紹介されており これは餡子を包んだふのやきで今のどら焼の原型と思ってます。

利休卵  

材料
白胡麻300g、玉子3個、砂糖小匙1、酒90ミリ、塩小匙1、金山寺味噌(酢と酒で緩くのばしておく)

白胡麻を空煎りしすり鉢で油が出てきてなめらかになるまでする。 これに酒、ときほぐした卵 砂糖をいれさらにすりまぜ 茶巾に包み、強火で4~5分 中火で5~6分蒸す 器に盛り金山寺味噌と炊いた野菜を添え仕上げる。

 

茄子のおろし汁  

材料
茄子、出汁、味噌、辛子

茄子の皮を剥きすりおろし 出汁に溶き入れ火にかけて 味噌で味を整える。 皮は短冊に切り素揚げし 辛子と共に盛り仕上げる。

 

江戸料理人・「晩酌や月」主人
 福 留  章

 
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