HOME | Local Hospitality

Local Hospitality  

Geo Story  

“Local Hospitality”
地球、自然、人間と共に
 
 
 

 価値観のシフト   

ガストロノミーの世界が表現される現場であるレストランやホテルの世界に30年以上携わって参りましたが、コロナ禍以降この数年は、その在り方を見つめ直す特別な機会となっています。これからは地球や人を思いやることが出来ないとそのレーゾンデートル自体を疑われてしまいます。欧米のレストランやホテルは、いち早くSDGsを取り入れたブランドを展開していて、ガストロノミー・ツーリズムやアルベルゴ・ディフーゾなど大きな動きとなってきていますが、日本はまだ伸びしろが多い状態です。そんな中、私の関わった場所や人の話ではありますが、いくつか参考になるのでは、というLocal Hospitality(その土地に由来するおもてなし)のお話をご紹介したいと思います。

 

参加するという選択肢

一つ目は日本のウユニ塩湖とも呼ばれている香川県三豊市の父母ケ浜。穏やかな凪の瀬戸内海に面した美しい浜辺で、潮が引いた時には空が海面に映り込み素敵な写真が取れる為、SNSや噂で聞きつけた若者達が集います。周辺には素敵なカフェやレストラン、ゲストハウスも出来て町が活性化しました。素晴らしい話なのですが、実はその浜辺が美しくなったのは、20年以上前から地元の方々が日曜日になると、誰が声をかけるでもなく集まって、早朝の干潮時に浜辺のごみを拾ってきたからなのです。私も参加しましたが、そのプラスティックごみの多さに驚かされました。そうして浜を守ってきた方々も高齢化してきた昨今、地元の若者達がそれを引き継いでいこうとレストランやゲストハウス事業と浜を守ることを区切ることなく行っています。今ではゲストハウスの宿泊者さえ、ごみ拾いに参加する、という現象も生まれています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

そこでしか味わえないもの

そして二つ目は山形県庄内地域の水田の中に建てられたSHOUNAI HOTEL SUIDEN TERRASSEに宿泊した際の出来事です。ここは、東京近郊から喧騒を離れゆっくりとワーケーションなど、滞在自体を目的に来られる方が多いそうですが、夜になって部屋にいると、地響きのような音が聞こえてきてびっくりし、スタッフの方にどうしたのか訊いてみたところ、夏に多く見られる出羽山地から庄内平野に吹き抜ける風で、日本三大局地風の一つなのだと伺いました。これを訊いて、普通ならうるさくて眠れないと苦情を伝える人もいらっしゃるでしょうが、逆に特別な経験ができたと何だか嬉しくなったのを覚えています。レストランでは地元出身の温かい雰囲気のスタッフ達が、時折方言も交えながら庄内野菜や郷土料理の話をしてくれました。これらの体験は他のどこでもない、今ここでしか味わえない体験であり、食材もほぼ全てが庄内産なので、滞在を通してその土地の一部になれたような不思議な感覚になりました。

 

第二のふるさとをつくる

インバウンド需要はコロナ禍明けにリベンジトラベル需要となり必ず戻りますが、国は邦人需要に対し「第二のふるさと」となりえるよう地方の環境整備や宿泊施設のリニューアルに予算を当てています。
 
 以前、XPJPの取り組みに関わらせて頂いた折、世界の主要都市で50店舗を超える「NOBU」レストランとホテルを展開されている松久信幸シェフにお会いした際に、「育てること、伝えていけることができないと一流になったとは言えない。心を新たにして今を過ごしている」とおっしゃっていましたが、これからの地球と人を大切にするLocal Hospitalityを担っていく若者の教育がとても大切だと改めて考えさせられる出来事でした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

Local Hospitalityのジブンゴト化

私が非常勤講師として教壇に立たせて頂いている日本ホテルスクールのレストランマネジメント卒業ゼミにおいて、学生達がSDGsをテーマに盛り込んだレストランプロデュースを行ったのですが、その審査員として関わらせて頂きました。そこではジェンダー平等を意識したユニフォームデザインの統一やフードロスを防ぐためのコースメニューのみの運営、海洋水質汚染防止の為に洗剤を使わなくて済むようテーブルクロスを無くすなど様々な工夫を盛り込んでいましたが、閉園した遊園地を利用する。自然豊かだが過疎化が進むエリアを立地に選ぶという学生達が居たことを嬉しく感じました。また、別の調理師学校では、料理だけの教育では次世代の料理人を育てることにならない。という将来広く活躍できる料理人を育てることをモットーにしている学校でHospitalityの特別授業をおこなったことがありますが、料理人を目指す学生がこんなに熱心にServiceやHospitalityの話を聴くのかと感心しました。そこで学生に夢を訊いたところ、先ずは腕を磨き、ゆくゆくは地元に帰って成澤由浩シェフのような自然と深く関わるシェフになりたいと話していました。彼らのLocal Hospitalityが本当に楽しみです。

 

地球と自然と人間のはざまに

今まで以上に、私自身も文化や文明、知恵を持つ地球人として、自然と人間だけでなく、料理人とお客様の間を取り持つ「中居さん」のように、地球に住む動植物と自然環境の中間を取り持つことができるよう、その土地土地のもつ自然環境の中で作り出されるガストロノミーのシーンにおけるLocal Hospitalityを組み込んだ取り組みを行い、同時に、業界人の教育指導にあたっていく所存でございます。

 

Solid Foundation Japan
井崎 正吾

 
PARTNERSHIP